うつ病・神経症圏

「うつ病・神経症圏」とは

「うつ病」は単なる一つの疾患として定義することは難しく、一般的に複数の要因からなります。生涯でうつ病を発症する人は約10%弱とされているものの、うつ病を発症して精神科を受診する人の割合は約20%弱とされています。薬物療法の効果がある人は約50%で、約30%が障害を残さず回復するとされています。
「神経症圏」とは古くは心因性精神障害と呼ばれおり、代表的なものはヒステリーと神経衰弱でした。現在では神経症性障害、ストレス関連障害、身体表現性障害およびパーソナリティ障害など幅広い疾患を含んでいます。根底に不安があることは共通していますが、うつ病と同様に複数の要因から疾患が形成されており、一つの原因が他の原因を刺激して様々な症状が出現するという悪循環に陥っている病気です。

「うつ病・神経症圏」が疑われる症状

うつ病は疲労感・倦怠感・悪心・痛みなどの不快な身体感情や悲しみ・抑うつ気分などの感情の障害だけでなく、食欲低下や不眠などの身体症状をも含む多彩な症状を呈します。
神経症圏にはたくさんの疾患がありますが、どの疾患にも概ね共通する症状としては、不安・緊張があります。すべての不安や緊張が病的なものではありませんが、日常生活に影響が出ている、自分では当然だと思っていても親しい人から以前とは様子や雰囲気が違うとの指摘があれば、病的な状態の可能性があります。

【うつ病・神経症圏チェックリスト】

下記のような症状がある場合、嗜癖/摂食障害の疑いがあります。


<うつ病>

下記の症状のうち①または②を含む5つ以上の症状があり2週間以上毎日続いている
① 1日中ずっと気分が落ち込んでいる
② 1日中ずっと何に対する興味もなく、喜びを感じない

  • 食欲が低下し、著しい体重減少がある
  • 眠れない、もしくは眠りすぎる
  • 話し方や動作が鈍くなる、イライラする
  • 疲れやすく、やる気がでない
  • 自分に価値を感じない、自分を責めるような気持ちになる
  • 考えがまとまらず集中力が低下し、決断できない
  • 自分を傷つけたり、死ぬことを考えたり、その計画を立てる

<神経症(不安障害)>

  • ささいな事でも不安や心配を感じる
  • 緊張してリラックスできない
  • 冷や汗、動悸、息切れ、手の振るえなどを感じることがある
  • 人前で話をして恥をかくのではないかと強い恐怖感がある
  • 過ちを起してしまうこと、評価をされることがとても怖い
  • 人の集まる状況を避ける
  • 不安や緊張で学校や職場を休んでしまう

「うつ病・神経症圏」の治療の流れ

初めての受診時に十分な問診を行った上で診断を確定し、その診断に沿った精神療法と薬物療法を行います。一度の診察だけでは診断を確定させることができない場合もありますが、病気の「見立て」を行い、治療を勧めていきます。うつ病・神経症圏の治療には、時間が必要です。症状が急に消えて良くなったと感じることもあるかもしれませんが、専門家からするとそれは注意が必要な状態です。急激に良くなる患者さんは再発の可能性が高いとされています。主治医とよく相談の上、焦らずゆっくりと、治療していきましょう。「いつのまにか症状が気にならなくなってしまった」というのが、精神科の理想的な治療になります。
入院治療はできるだけ回避すべきものではありますが、症状が重い場合、家族などの周囲のサポートが得られない場合、薬物療法の効果が十分でない場合に入院治療の適応となります。入院治療の際には、看護師・精神保健福祉士・心理士、様々な医療職・専門職と連携を行い、医師の専門技術だけでは解決することが難しい、家族間のトラブルや経済的問題、社会制度の利用など複数の視点から治療や支援を行っていきます。当院では、医師の個別対応力もさることながら、多職種チームで問題を解決していくことを得意としています。

治療プログラム

外来治療プログラム
定期的な通院を行い、精神療法と必要であれば薬物療法を行います。並行して、経過に合わせた情報(自立支援医療などの社会資源の利用)について病状に合わせた情報も提供していきます。

入院プログラム
神経過敏、衰弱状態に陥っている身体を休めていただくため、十分な休息を取ることを第一に考えています。入院中のプログラムとしては「作業療法」と「病棟ミーティング」を実施しています。
作業療法は、物事に集中することで他者からの影響を受けないことや、普段の入院生活では見ることができない本人様の能力を発見し、退院後の趣味や仕事に活かすことができます。
病棟ミーティングでは、本人様の思いや考えを言語化する大切さを感じていただき、他者の話を聞きながら自分に置き換え、“自分ならどうだろうか”と考えるミーティングです。