人を知る

患者さんと看護師は対等の関係
そこに安心と信頼が生まれる

病棟管理者としてスタッフをサポート

以前は一般病院に勤めていましたが、そこでは男性看護師としてのキャリアをイメージすることができませんでした。そんなとき、学生時代の実習でお世話になった精神科病院で活躍していた男性看護師長を思い出し、「精神科病院なら男性もバリバリ働けるのではないか…」。そんな記憶が東北会病院に入職するきっかけになりました。
現在は、閉鎖病棟で働いていますが、それまでは急性期病棟で10年間、アルコール依存症をはじめ、薬物、ギャンブルなど、さまざまな依存症の患者さんを看てきました。一昨年からは病棟管理者(係長)となり、スタッフの教育や病棟運営を中心とした仕事に携わっています。直接患者さんを担当することは少なくなりましたが、患者さんとの信頼関係は何より大切ですから、できる限り病棟を回り患者さんたちと顔を合わせるよう心がけています。

粘り強く寄り添い、快方へと導く

患者さんの中には治療途中で、自らの意思で退院してしまう方や、退院後、症状がぶり返して再入院となる方も少なくありません。
以前、酔って怪我をしたことがきっかけで入院したアルコール依存症の患者さんもその一人で、彼は治療の必要性に対する意識が低く、入退院を繰り返す日々が続きました。言葉づかいも荒く、とっつきにくい方だったのですが、粘り強く丁寧にコミュニケーションを取り続けることで、次第に入院前の生活や退院後の希望などを話してくれるようになりました。無事退院したあと、通院治療で来院された際、「責任ある仕事を任されるようになったよ!」と嬉しそうに話してくれたことは今でも忘れられません。
依存症は再発や再入院が多く、看護の難しさを感じることもあるのですが、回復したあと、近況報告に来てくれる方も多くいらっしゃいます。そんなときは、患者さんの力になれたと実感し、看護師になってよかったと、心から思います。

患者さんにストレスの少ない看護を目指す

一般病院に勤めていた頃は、点滴や注射などといった処置が中心でしたが、ここでは患者さんの心に寄り添い、会話をしながら想いを引き出し、理解することが大切な仕事です。何気ない一言が治療に影響を及ぼす場合もありますから、普段から振る舞いや発する言葉に意識を払い、患者さんにどんな意味を持つのかを考えるようにしています。ただ、あくまで患者さんと看護師は対等の立場です。目線が同じでなければ安心して話をすることはできません。また信頼関係も生まれません。精神科の看護は特殊なものと思われがちですが、けしてそうではなく、快方に向け協力し合う仲間なんです。
現在の目標は、閉鎖病棟での看護を自分のなかで確立することです。閉鎖病棟では治療のために患者さんの行動を制限するケースもありますが、それが不用意に長期化しないよう、負担の少ない治療を主治医と共に考えていきたい。また、法律に関わる事象も多くありますので、精神保健福祉法などの関連法についても、管理者としてより理解を深めていきたいと思っています。

子どもと触れ合うことが気分転換に

休日やオフの時間はもっぱら8歳と4歳の子どもたちの相手をして過ごしています。なかなか自分だけの時間は持てないのですが、子どもたちとの触れ合いが良い気分転換になっています。心と体の健康維持のため、オンとオフを上手に切り替えることはとても大切ですよ!

退院後の生活を見据え
多職種が連携し患者さんを支える

病棟で変わる看護アプローチ

以前に務めていた総合病院では、精神疾患を持つ方が受診されることも多く、病気の治療だけではなく精神症状もしっかりケアしなければ、どんな治療もうまくいかないのでは、と感じていました。あらためて患者さんの不安や精神症状へのアプローチ、看護をしっかり学びたい。そう考えたことが精神科病院へ入職するきっかけでした。東北会病院を選んだのは、統合失調症をはじめアルコール使用障害、ギャンブル障害など、依存症を幅広く学べる環境が整っていたからです。
入職後は、6年ほど閉鎖病棟で経験を積み、2021年3月に療養病棟に異動しました。閉鎖病棟には幻覚や幻聴など症状の強い方が多く、日常生活がままならないため、生活リズムや金銭管理などを看護師がサポートします。一方、療養病棟では、症状が比較的穏やかなため、介入は最低限にとどめ、リハビリやグループワークなどで回復を図り、退院後に社会生活がスムーズに送れるようケアしていきます。アプローチの仕方は違いますが、患者さんの症状を観察し日々の変化を見過ごさないこと。対話を通して気持ちをくみ取り、必要なケアを施す看護は共通だと思っています。

患者さんの社会復帰に向けた多職種連携

精神科では患者さん本人や周囲の安全のため、どうしても強制入院や身体拘束が必要になるケースもあります。そうした場合、患者さんが入院に対してネガティブなイメージを持ち、治療が順調に進まないこともあります。重要なことは、いかに患者さんの抱いているマイナスイメージを取り除き、治療に前向きになっていただくか。患者さん自身が話し、本人にとって“何が問題なのか”に気づいていただくことです。時間がかかり根気が必要ですが、日頃から丁寧にコミュニケーションを図り、心に寄り添う看護を実践しています。
また、療養病棟では退院したあとの生活を見据えた治療も重要です。ご本人やご家族が望む生活を考慮し、自宅に戻るのか、グループホームなどの施設に入るのか、社会資源の活用やリハビリの方法、家族への援助など、様々な視点で、医師や保健師、精神保健福祉士などと連携しながらベストな道を探ります。

退院後の元気な姿がこの仕事のやりがい

仕事をしていて嬉しいのは、患者さんが退院したあと、順調に生活する姿に触れられたときです。以前、統合失調症の患者さんを担当したときのこと。最初は症状が重く苦しんでいたのですが、時間をかけて徐々に改善していき、無事に退院できました。その方が退院後、外来を受診した際、明るい笑顔で近況報告してくれた時は、「一緒に頑張って良かった!」と心から感じました。
最近ではグループセラピーに関わるようになり、患者さんとの接点も増えました。グループセラピーでは看護師が進行役になり、患者さんに質問を投げかけ、話を引き出したり、患者さん同士の対話へ導いたり、心の内を話していただくことで自己理解を促していきます。私はまだ先輩たち進め方を見て学んでいるところですが、今後は研修などにも積極的に参加し、知識・スキルを身につけていきたいと思っています。
一般の診療科と比べ、患者さんとたくさん話すのが精神科の看護です。患者さんの人生を共に振り返り、患者さんの今と未来を見つめる。本当の意味で寄り添った看護ができるのが精神科の看護だと感じています。

患者さんの声に耳を傾け
いま何ができるのかを考える

先輩の多様な看護観に触れるOJT

精神科の患者さんは周囲からなかなか理解されない苦悩を抱えています。私は看護師としてそうした方々の心の苦しみを軽減したい。そう思い精神科を志望しました。就職先として東北会病院を選んだのは、依存症の専門病院で幅広い精神症状の看護に携わりたいと考えたから。また、当院は家族に向けたセミナーを積極的に実施するなど、患者さんの退院後を見据えた取り組みを積極的に行っている点も魅力に感じました。
1年目の今は研修やOJTを通して仕事を覚えているところですが、入職後、初めて受けた倫理綱領の研修がとても印象に残っています。精神科では、症状の重い方などにデリケートな対応をすることもあり、「看護師としてどんな倫理観を持ち、人権に配慮すべきか」を強く意識する必要があります。精神科看護の現場に立つために大切な心構えを研修で再確認できたことは、とても良かったと感じています。OJTでは、プリセプターの先輩だけでなく、複数の先輩から、基本的な看護技術はもちろん、患者さんやご家族との向き合い方など、現場でしか学べないことを吸収しています。先輩たちの看護に対する前向きな姿勢に刺激をもらいながら、自分の看護を見つけていきたいと思っています。

問題解消のために今できることを

仕事を進める上で心がけているのは、「患者さんがいま問題にしているのは何か」を考え接することです。治療プログラムにはグループセラピーや運動プログラムがありますが、体力測定などのプログラムを補助するときにも、「調子はいかがですか?」「お変わりないですか?」などと声をかけ、患者さんの言葉や表情などから情報をインプットするようにしています。
患者さんの話を聴くのは精神科看護の大切な仕事の一つです。ただ、患者さんの年齢層は幅広く、生活歴も多様、複雑な家族関係を抱えている方もおられ、人生経験がまだ浅い私にとって具体的な助言が難しいときもあります。大切に思うのは、患者さんの悩みや苦しみの原因を探し、その解消のために“いま何ができるのか”を考え続けること。その繰り返しが患者さんの回復につながると信じています。患者さんと信頼関係を作り、困っていることや不安に思うことを正直に話してもらうにはとても根気がいりますが、患者さんの話を傾聴したあと、「話を聞いてくれて、気持ちが楽になったよ」と言っていただけたときは、自分のことのように嬉しいです。

心を開き、変っていく患者さんたち

治療プログラムを通して患者さんが変わっていく姿を見られるのは、精神科で働くやりがいの一つです。入院直後は表情が硬く、イライラしがちだった方が、徐々に笑顔が出るようになり、雰囲気も穏やかになっていく。ふとした会話のなかで、冗談を言い合って笑ってくれるようになると、「心を開いてくれたのかな」と嬉しくなります。
働き始めてから、多くの患者さんの考え方や想いに触れ、視野が大きく広がったと感じています。授業では学べないことを患者さんから日々学ばせていただいています。現在の課題はもっと“聴く技術”を磨くこと。先輩たちを見ていると、患者さんの本音を会話のなかで上手に引き出していて、とても勉強になります。
当院は小規模ですが、スタッフの顔がわかるちょうどよい大きさ。看護師同士の仲も良く、穏やかでコミュニケーションの取りやすい環境です。これからも先輩たちの看護を見て学び、自分だけの看護スタイルを見つけていきたいと思っています。

ライブ映像で元気をチャージ!!

オフの時間は、家で好きなアーティストのライブDVDを観て過ごしています。今はリアルのライブに行くのは難しいですが、映像だけでも元気がもらえます!
また最近はYouTubeのゲーム実況動画もよく観ます。リラックスして好きな映像を観ていると気分もリフレッシュ。新たな気持ちで仕事に臨めます!